漢方の日々

徒然なるままに

股関節痛と漢方

股関節痛を訴える患者さんが時々来院されます。従来より、漢方は股関節痛にあまり有効ではないとの評価が一般的です。股関節痛は、加齢とともに日々の生活習慣の違いがその発症に影響するようです。表にお示ししたように、股関節痛を惹起しやすい特徴的な日常生活があります。足を組む、いつも同じ側で重い荷物を持つ、長時間の過度の運動や急な使いすぎ、などが股関節痛を起こしやすい誘因となります。

 もちろん、股関節自体に異常があることも稀ではありません。表にお示ししたように、変形性股関節症や股関節唇損傷など関節腔に物理的な異常がある、また筋膜炎や腱炎などの炎症性のタイプがあり、専門医による診断が重要です。さらに痛みが股関節部周辺に限局するのか、あるいは仙腸関節痛の一部の症状なのか、を見分けることも重要です。

 漢方方剤としては、意外なことに二朮湯が第一選択剤となります(文献2)。二朮湯は、五十肩、肩関節症に特効的に用いられる漢方方剤です。しかし、その生薬構成をよくみると、痛みや痙攣、浮腫みをとることは勿論ですが、本剤は筋や腱の「こわばり」を除く、ことが主な作用のようです。この二朮湯の効能についてはいずれ、再度詳述してみたいと思います。

 第二段の方剤群としては、麻杏薏甘湯や薏苡仁湯があげられます。麻杏薏甘湯についてはすでに「手指関節痛と漢方」の項目でその生薬構成と作用を述べてきました。本剤はわずか4生薬から構成され、鎮痛効果は即効的です。薏苡仁湯は麻杏薏甘湯と生薬構成が類似しますが、さらに生薬を加え、鎮痛・鎮痙効果を高めた方剤です。

 漢方方剤を選択する際、瘀血を除く治打撲一方(調栄活絡湯)や浮腫みをとる防已黄耆湯との合方は時にかかせません。単剤での治療より、2種類の方剤の合方がより著明な効果を得ることが稀ではありません。なお、コメントいただければ今後の励みになります。

股関節痛の誘因

股関節痛の原因疾患と特徴